以前よりご紹介させて頂いてきた、パリのフレグランスブランド、ATELIER MATERI(アトリエ マテリ)。
ここではアトリエマテリというブランドのご紹介と、ラインナップされている全9種類(2024年10月現在)のEau de Parfum(オードパルファム)作品をご紹介致します。
2024年10月にリリースされた高濃度のExtrait de Parfum(エキストレドパルファム)コレクションについては別記事にてご紹介しております。
→ 高濃度で香りが長時間持続するExtrait de Parfumコレクションが誕生【Burgundy Oud / Ambre Papier / Neroli Hasbaya】
ATELIER MATERIとは?
ブランドの創設者であるVéronique Le Bihan(ヴェロニク ル ビアン)は化粧品とフレグランスの開発に12年間携わった後、2019年にハイラグジュアリーパルファンメゾン、ATELIER MATERI(アトリエ マテリ)を立ち上げました。
アトリエマテリというブランド名は、「atelier = 工房」という単語と、北西フランスのブルターニュ地方のブルトン語で「matière = 素材 」という意味の単語の組み合わせ。
フレグランスだけではなく建築やデザインにも精通する彼女は、そのどれもが「素材を変化させること」「素材を変化させる職人達」という共通点にフォーカスし、モノ作りに必要な原材料と、それに携わる職人技へのリスペクトが込められています。
また、一般的なトレンドやマーケットカレンダーのスケジュールからも距離を取り、自分達の信じるクリエイティビティを追求。
製品の品質に妥協することのない「Slow Luxury (スロー ラグジュアリー)」を哲学として掲げてコレクションを展開しています。
ATELIER MATERIの香り
先ほどからお伝えしている通り、アトリエマテリの最たる拘りは「素材 (原料)」です。
伝統的な香料から珍しい香料まで、生産者や仕入れ先が環境に配慮し、美しい風土や天然資源を脅かすことなく生産されるサステナブルな天然香料を厳選し使用しています。
自然なエレガンスと大胆なコントラストを表現した作品を送り出すべく、調香師は丁寧に選ばれたマテリアルを用いて、丹精込めて香りを重ね合わせていくのです。
オブジェクトデザイン
ディープブルーが印象的なボトルは、20世紀を代表する建築家Mies van der Rohe(ミース ヴァン デル ローエ)が残した“Less is More(少ない方が豊かである)”という考え方からインスピレーションを受けたデザイン。
現代建築における象徴的な素材であるコンクリートを用いたハンドメイドによるボトルキャップにはゴールドの筆跡があしらわれ、職人の手仕事を感じることが出来ます。
ボトルにはATELIER MATERIのメゾンロゴが刻印され、メゾンの美学と細部への拘り、職人への敬意を表現し、パッケージはFSC (Forest Stewardship Council : 国際NGOの森林管理協議会)認証の木材を原料とした紙が使われています。
香りのラインナップ
2024年4月現在、日本国内で正規販売されているアトリエマテリのコレクションは全9種類、フルボトルの100mlとTravel Sizeの10mlの2種のサイズ展開、価格はそれぞれ税込37,400円と税込8,800円となります。
それぞれの香りのサンプルとして、ムエット(試香紙)をお取り寄せ頂くことも可能ですので、ぜひ香りを確かめてみて下さい。
それでは9種類の香りをそれぞれ見ていきたいと思います。
Cèdre Figalia(セードルフィガリア)
2024年3月にリリースされたブランド最新作。
バジル、ほうれん草といった野菜系の香料や、イチジクの葉といった要素の見事なコンビネーションで昇華し、吹きかけた瞬間には葉っぱをちぎった時のような鮮烈なグリーンを感じることが出来ます。
イメージにもある今回のメインノートであるフィグは、乳白色をイメージするようなミルキーな仕上がりに。
名前にも入っているCèdre = シダーウッドは、エレガントで繊細なヴァージニアシダー、新鮮さと生き生きとしたノートのアラスカシダー、温かみがあり包み込むようなオーラのアトラスシダーという、アメリカ南部の森林に由来する三種類のシダーウッドのエッセンスを吟味。
最後はフィグとウッドの甘さが引き立ち、優しく消えていきていく、そんなイメージを感じます。
Cèdre Figalia(セードルフィガリア)は決して派手に主張することはなく、ミニマルで芯のある香りだと思います。
Bois d'Ambrette (ボワ ダンブレット)
マンダリンの柑橘感、ジンジャーの苦味、そしてグリーンの葉が美しい森の中の木々。
立ち上がりの背筋が伸びる凛としたウッディさの陰に見え隠れする、木々の隙間から差し込む陽の光の温かさを表現したような、まろやかでムスキーな甘さ。
次第に角が落ちて柔らかな甘みがメインへ、そしてゆっくり時間をかけて消えゆくその消え方もとても綺麗な表現だと感じます。
Bois d'Ambrette(ボワ ダンブレット)は洗練されたシャープさとふんわりと柔らかな香りが同居する美しい香りです。
Cacao Porcelana (カカオ ポルスレナ)
吹きかけた瞬間から驚く方が続出するカカオ感。
オープニングが最も甘さを感じるのですが、その甘さもベタッと重さのあるお菓子的な甘さではなく、あくまでも素材としてのカカオの持つフレッシュさすら感じるようなサラッとしたややパウダー感のある甘さがメイン。
グルマンノートではありつつウッドやタバコも効いていて、単品での綺麗な香りに魅了されるのはもちろん、意外にも重ね付けでも使いやすい香りに思います。
Cacao Porcelana(カカオ ポルスレナ)は「素材」の美しさを引き出すアトリエマテリらしさを存分に感じられる、アイコニックな香りです。
Cuir Nilam (キュイール ニラム)
最新作(2024年1月現在)の香りは「Cuir = レザー(フランス語)」「Nilam = パチョリ(インドネシア語)」ということで、名前の通りメインはレザーとパチョリ。
オイルを入れたもっちり柔らかくしなやかなレザーをイメージする、かっこいい香りです。
レザーの香りと聞くと「渋くてダンディでいかにもメンズなイメージ」が浮かびそうですが、こちらは高貴なローズの隠し味によって洗練された上品なレザーになっており、性別問わず使ってもらえそうに思います。
Cuir Nilam (キュイール ニラム)はレザーが苦手な人にも試してみてもらいたい、エレガントな香りです。
Iris Ebène (イリス エベーヌ)
アイリスの土の付いた根っこ部分のような深くどっしりとした香りから、甘さのあるしっとりとしたスウェードレザーへ。
レザーの香調というと一つ前で紹介したCuir Nilamがありますが、比べてみるとCuir Nilamの方がメインとしてレザーを感じられ、Iris Ebèneは土っぽいアーシーな中にレザーも感じるという印象です。
全体的に柔らかくパウダリーな香りは、上品で落ち着きのある大人の格好良いイメージが浮かんできます。
アトリエマテリの中では重さを感じるIris Ebène (イリス エベーヌ)ですが、品の良さも相まって重すぎるように感じることもなく通年で愛用いただける香りだと思います。
Narcisse Taiji (ナルシス タイジ)
清潔感のある青々とした瑞々しい水仙の香り。
時間の経過と共に顔を出すレザーやパチョリが確かなアクセントとなり、単純に綺麗なフローラル香水で終わらないからこそ、よりトップのクリーンさや野生味のある美しさが際立ちます。
クリーンな香りは暑い時期に良さそうと思いがちですが、寒い季節に花を咲かせ「雪中花」とも呼ばれる水仙の様に、このNarcisse Taiji (ナルシス タイジ)は空気が冷たく澄んだ冬の時期にも綺麗な香りだと思います。
Poivre Pomelo (ポワーヴル ポメロ)
トップの軽やかな柑橘は、ピリリとしたペッパーで苦味を表現した果肉味溢れるグレープフルーツ。
このシトラス感と共に芍薬と金木犀がほんのりと香ることで、爽やかな方向に振りすぎない穏やかなシトラスになっているように思います。
それ故に「キリッとリフレッシュしたい時」のようなシーンよりも、もっと生活に溶け込んで日常使いし易い香りだと感じます。
Poivre Pomelo (ポワーヴル ポメロ)はポップアップ店頭でも性別問わず、とても心地良く気に入ってくださる方の多い香りです。
Rose Ardoise (ローズ アルドワーズ)
フラワーショップのキーパー(花の入った冷蔵庫のようなショーケース)を開けた瞬間を思い出す、茎を切った薔薇。
この香りはフレグランスに馴染みのない方にとって漠然とイメージする人工的なローズ香水とは異なる、とてもニュートラルなローズだと思います。
力強く野に咲いていた頃の名残としての土っぽさも感じられるようでもあり、それ故にポップアップ店頭では男性のお客様にも手に取っていただくことが多い香りです。
Rose Ardoise (ローズ アルドワーズ)を試してみるとローズの印象が変わるかもしれません。
Santal Blond (サンタル ブロンド)
フレグランスやお香でお馴染みの白檀をメインにAtelier Materiの解釈でフィーチャーした香り。
ポップアップ店頭で一番人気のこの香りは、サラッとしたパウダリーさが際立つ、温かさを感じるまろやかなウッド。
サンタルだけでなくヒノキやトンカ豆の丸みのあるリッチな甘さで包み込んでくれる優しい香りだと思います。
ここで言う甘さと言うのはグルマン調ではないのですが、この香りはグルマン好きな方にも刺さっている印象を受けます。
肌馴染みの良いスムーズな香りをお探しの方も、是非一度Santal Blond (サンタル ブロンド)を試していただければと思います。
澄み切った綺麗な香り達
全9種類のラインナップ、気になった香りはありましたでしょうか?
アトリエマテリの香りはどれも「澄んだ空気のよう」と表現したくなる、綺麗で上品な香りです。
お客様も「全然鼻が疲れない」と仰られる方も多く、素材に拘ったブランドならではのコレクションだと感じます。
また、少しマニアックではありますがアトリエマテリは「スプレー」にも拘っています。
噴霧の細かいスプレーは香水を肌に乗せた時にも満遍なくムラにならずに肌に乗せることが出来ます。
これはフルボトルの100mlもトラベルサイズの10mlも同様に霧が細かいスプレーで、何度もプッシュしたくなる押し心地です。
香り立ちの美しさも含めて細部まで妥協せず、上質な素材を最高な状態で堪能してもらいたいというブランドの拘りが詰まっているように思います。
気になった香りがありましたら、それぞれのフルボトルページより「香りのサンプル : ムエット」をお取り寄せしてお試し下さいませ。
最高の香り達を是非お楽しみいただければ幸いです。